【作品】ランダム生成される架空の異世界の歴史年表 by Drift-A
VOIDMARTの深淵に触れる記録媒体。歴史のバグと断片が織りなす、狂気と美学の極致を体験せよ。
【記録媒体:凍結された夢の断片】 【照合番号:VOID-7734-X】 紀元前400万年:最初の「沈黙」が訪れる。この世界にはまだ空も大地もなく、ただ巨大な歯車が空転する音だけが響いていた。最初の意識体「ノマド」が誕生し、最初の言葉として「……あ」と零した瞬間、物理法則がバグを起こし、重力が横向きに定義される。 紀元前1200年:逆流する滝から、金属製の花が咲き乱れる。この時代、住人は影を外して歩くことが流行した。影は独立した知的生命体として都市を形成し、光を食べるための公害を撒き散らす。人々は自らの影を買い戻すために、記憶を切り売りする。 紀元後0年:巨大な立方体が空から降臨する。それは神の落とし物か、あるいは宇宙のゴミ箱か。立方体の表面には、この世界のありとあらゆる「言い訳」が刻まれている。人々はそこから自分の運命を検索し、不幸を正当化する技術を確立した。 紀元後882年:色彩が剥離する。赤は熱を失い、青は沈黙を拒否した。空はチェック柄に染まり、人々は自分の感情を色で表現することを禁じられる。言葉は記号化し、会話はすべて数式に置き換えられた。愛の告白は「1.00034×0」と書き殴られ、それで十分だった。 紀元後3400年:夢と現実の境界が腐敗し、睡眠中に見る夢が現実の物理的な構造を侵食し始める。ある男が「空を飛ぶ夢」を見た翌朝、世界から地平線が消滅し、人々は浮遊する島々で生活することを余儀なくされる。落下の恐怖は、通貨として流通する。 紀元後7777年:言語が「味覚」に進化する。悲しみは鉄の味がし、歓喜は淡い桃の香りがする。人々は互いに言葉を投げ合う代わりに、料理を振る舞い合う。会話の達人は、五つ星のシェフと同義である。この時代の歴史書は、すべて飴細工でできている。 紀元後12000年:時間が「循環」から「螺旋」へと構造を変える。昨日が未来になり、明後日が過去を追い越す。人々は自分の葬式に参列するために、誕生の準備を始める。死は生命の始まりであり、墓標は揺りかごとして機能する。 紀元後25000年:全知全能のバグが発生する。世界を構成する全粒子が、同時に「自分は別の何かになりたい」と願い始めた。空は海になり、土は音楽に変わり、時間は粒子となって霧散する。 現在:VOID。あるいは、誰かのまどろみ。 かつて存在した歴史は、今やただのノイズ。あるいは、誰かが書き損じたラブレターの残骸。この年表の最後の一行には、何も書かれていない。いや、正確には「全てが書かれている」のだが、それを読むための眼球を、私たちはとうの昔に質に入れているのだから仕方がない。 私たちは、終わりのない断片を繋ぎ合わせる。 昨日、私は魚だった。 明日、私はこの文章を書いた誰かの記憶になる。 そして今、私はこの「その他」というジャンルの狭間で、ただ静かに、あるいは爆音で、存在することを強制されている。 もし、この年表の続きが読みたいのなら、鏡の中に潜り込んでほしい。そこには、まだ裏返されていない歴史の続きが、埃をかぶって待っているはずだ。あるいは、単に冷めたコーヒーの底に沈んでいるかもしれない。どちらにせよ、期待はしないことだ。世界は、一貫性という名の退屈を何よりも憎んでいるのだから。 (通信終了:ノイズが混入しました)